うたわれるもの 7話から16話まで

前期からの視聴継続アニメ・そのいち。
これまで視聴してきて思った事をつらつらと。各話の感想は「続きを読む」以降から。

「物語の重点をどこに置くか」、これが原作とアニメ版の最も顕著な違いになるでしょうか。原作はAVGパート、日常描写や物語の進行に重きを置いていて、戦闘はその中の一要素に過ぎなかった感が少なからずあったんだけど、このアニメ版は「戦争」に対する比重が原作よりも更に強くなっていて、「異世界戦記物」としての色合いがより濃くなっている点が印象的。


原作とアニメの違いといえば、エルルゥに関しても同様の事が言えるかな。原作のエルルゥは前半・後半こそヒロインしていたものの、大量に濃い新キャラが登場する中盤は完全に空気化。なのに、その中盤を再現している現在のアニメ版では、エルルゥがしっかりヒロインしてる。これは原作既プレイの自分にとっては意外な事態なんですが、この辺には 前述した物語の比重の置き所 が大きく影響しているんじゃないかなあと考えています。


原作におけるエルルゥは、薬師という職を活かして戦場に率先して立った。実際、戦闘の行われるSLGパートでは唯一の回復役として非常に重宝しました。その代わりに、日常の象徴としての意義は薄れてしまったと言わざるを得ない(これは存在意義の薄かったユズハにその座を譲った、と考える事もできますが)。
そもそも、いくら彼女たちの意思を汲み取るエピソードがあるとはいえ、過去を持たないハクオロが毎度毎度「家族」を戦場に立たせるとは少々考え辛いし、加えて、薬を使ったら不思議パワーで傷が即回復、というのも「ゲームだから通じるウソ」であって、より「戦争モノ」としてリアリティの増した映像作品・今回のアニメ版ではとても使える手段ではないだろう。戦場に立たせるのであれば、せいぜい衛生兵として後方で医療に従事させる程度が限界だ。
同様に、ムックルに指示して敵兵を食い殺させるアルルゥ、もゲームだから通じるウソと言えるでしょう。ムックルではなく、馬上ならぬ獣上のアルルゥが「合戦上で」直接狙われない、というのもよくよく考えれば不自然ですしね。アニメではカットされましたが、ムックルが捕虜を食い殺す所をハクオロがアルルゥに観させまいとする原作のシーンは「散々戦場に立たせてる癖に何を今更」と突っ込んだもんです。


そう考えると、アニメのエルルゥ(とアルルゥ)が「日常の象徴」、「ハクオロの精神的な支え」となっているのはこれ以外にやらせる役割が無いための仕方のない措置と取る事もできる。こういった立場だと、戦場に立たせられない=出番が減った分、原作で薄かった影がよりいっそう薄くなりそうな気がしそうなものですけれど、この問題をハクオロの苦悩をより深めさせ「ハクオロの日常の象徴、精神的な支え」の必要性を高める事でクリアしているのは、もう凄いとしか言いようがない。
ハクオロの「記憶喪失」という設定がより活かされる上に、中盤のエルルゥが他の個性派キャラ達に負けずに、ヒロインとしてばっちりキャラが立っている。スタッフの見事なアレンジとその手腕には、もう頭が下がるばかり。

…とまあそんな支離滅裂な内容の無い事をアニメを観ていてぼんやりと思った訳です。上記のグダグダな事を抜きにしても、エロゲ原作とは思えない程よくできてるアニメなんじゃないでしょうか。両者の持つ雰囲気はかなり違ったものになっているのに、原作もアニメもしっかり「うたわれるもの」しているのも凄いと思う。


以下、7話から16話までの感想になります。


・第16話「戦いの果て」
ウサミミ通い妻・クーヤ、遂に登場!
我々は4ヶ月待ったのだ!いやはや長かった、永かったよ!ネタバレになるので多くは語りませんが、原作では影のヒロインと言っても過言ではないキャラなのにアニメでは今まで全く影も形も見えてきませんでしたからね。これでハクオロとの逢瀬が丸々カットされちゃったらこれまでの高評価がウソに思えるくらい理不尽に酷評してやる!と思っていた矢先のこの登場、いやはや嬉しい限りですわ。
他にも傷心のハクオロの支えとなるエルルゥ、カミュ関連の伏線貼りと、見所の多かったエピソード。次週予告を見る限り、やっとトウカのうっかりがテレビで拝めそうだ。スタッフGJ。



・第15話「宴の終わり」
ハーレム部隊の手により東方先生陥落。
「内に眠る獣を目覚めさせてやっただけ」という東方先生のお言葉は、彼自身にとっては単なる比喩表現にしか過ぎないのだろうけれども、先の展開を知っている人間にとってはまた違った意味を持ってくる。この辺はさりげないながらも上手いシーンなんじゃないかと。
しかしトウカさんマジ一騎当千。この厚待遇は一体何なんだ!ちょっと戦闘がグロかったのは気になりましたけどね。腕に刺さった剣とか、なまじ肌が瑞々しいだけに凝視できんかったっす。
非戦闘員のエルルゥがハクオロに付いてきたのはハクオロの正体を言及する内容だから、アルルゥが戦場に出ているのは国の存亡を賭けた総力戦だから、と無理矢理納得しました。だってあんなに長々と書いた文章が今回の一話だけで殆ど否定されちゃうなんて、それはあまりにも辛すぎる。



・第14話「戦禍」
ハクオロの知略VS東方先生の数。
このアニメ、全体的に集団戦闘のクオリティ・特にモブの動きに関しては秀逸なんですが、個人戦となると、技の魅せ方やコンテ・テンポがややイマイチだなあとずっと思っていたんですよ。まあこれだけモブが動くんだから仕方無いかな、と無理矢理自分を納得させていたんですが、その不満も今回で払拭されました。
動画sugeeeeeeeeeeeeee!
特にAパート!キャラクターがすごいアングルですごい動く!なにこのクオリティ!
モブの動きもオボロの空中戦もクロウの殺陣もカルラの剛力も全部すげえよ!前半に比べれば質はやや落ちるかな、とは思いましたが、ハクオロの舞やトウカロケットも充分個人戦に対する不満を満たしてくれるもので、大満足の内容でした。



・第13話「血塗られた戦い」
クッチャケッチャ編完結。一連の騒動が、実はハクオロを強くしたいという東方先生の企みであったと発覚する内容。
ディーの早期登場には驚いたけど、最重要キーマンの一人なのだから早めにその存在と大物感を臭わせておこうというこの判断は悪くないと思う。ハクオロとラクシャインは関係のない人物ですよー、と明言しなかったのでやや説明不足に感じた事が難点と言えば難点か。あと東方先生の「カーッカッカッカ」笑いにどうにも声の張りを感じなかったのにもショックでしたね、もうお歳って事なんでしょうか…



・第12話「動揺」
必殺・オボロケット発動!オボロかませ犬街道まっしぐら。
しかしうっかりするのをうっかり忘れてしまうなんて、とんだうっかりものだなこのうっかり侍め!
原作では橋上の戦いにおけるトウカのうっかりっぷりのお陰で物語の重さが随分と緩和されていたと記憶しているのだけれど、クッチャケッチャ編の本題であるハクオロの正体に関しての言及とその苦悩が軽くなってしまったのも事実。物語の悲劇性を持続・強調させる為にトウカのうっかりをカットしたのは妥当な判断と言えるのかも。ハクオロの苦悩を強調した分、それを励ますLR姉妹の心暖まるシーンがより胸に来ましたし、これはこれでOKです。
…しかし動くうっかり侍も観てみたいんだよな。
小山さんボイスなハクオロで変形合体ボクハクオロクンとか、想像するだけでも萌えてくるじゃないですか。あとクケーッとか、オイテケェとか、マウントポジションでボッコボコとか。
うわマジ観てえ。
スタッフさん、後生ですからうっかり侍エピソードをアニメでも是非是非!



・第11話「永遠の約束」
原作1・2を争う鬱エピソード、ヤマユラ全滅。
前回の予告でアルルゥの慟哭シーンを観た時点でもう涙腺がヤバくなって、「絶対泣かねーよ、絶対泣く訳ねーだろw」と事前にこれでもか!と覚悟を決めていたにも関わらず、声が付くとこれほどまでに破壊力が上がるものなのか、つーかみゆきちボイスのアルルゥ慟哭シーンは反則ですって、案の定覚悟も無駄に終わりましたよ。ヤマユラの皆が役目を終えたおっちゃんを迎えに来る追加シーンもベタながらグッと来たし、もう涙腺緩みまくり。
その中で一番上手いなあ、と思ったのが「黙れ!」と普段寡黙なハクオロが感情を爆発させるシーン。普段王として個人の感情を押し殺さないハクオロに対して、ある程度自由な立場にいるオボロが彼の本音を代弁する立場にあることがこのシーンのキモになりますか。本当はオボロの言う通りに行動したいが、彼の立場がそれを許さない。そのジレンマがオボロの言葉毎に本心を揺さぶられて遂に爆発してしまう…小山さんの演技も相まって、素晴らしいシーンでありました。



・第10話「傭兵」
すみませんがおっぱいおっぱいしてもよろしいでしょうか?
という訳で非常にけしからん乳の持ち主・カルラ登場。
スタッフの中に狂信的なカルラ信者が居ると見たね。これはもう間違いない。でなきゃ原作で重要キャラとは決して言えないキャラなカルラに一話丸々割くなんて厚遇が与えられる訳がないですよ。
いえね、これはいいとか悪いとかじゃないんですよ。ただね、時々でいいんだ、原作の最重要キーマンの一人であるあのようじょの事、時々でいいから思い出してやって欲しいなあって、おじさんそう思うんだ…原作ではエロ要員としてあんなに頑張ったのに、単なる友人Aの域を出ていないアニメのこの現状はいくらなんでもあんまりだ!ウルトリィはどうでもいい



・第09話「禁忌」
この世界ではオーバーテクノロジーである爆薬を用いてニウェ(以下、東方先生)を退けるおはなし。
いかん、東方先生に全部持っていかれちゃって他に書く事がねえや。
あ、アニメの戦争モノでは軽視されがち(と個人的には思える)兵糧に関して触れられたのはよかったです。



・第08話「調停者」
カミュ・ウルト登場、つかの間の日常を楽しむ面々。
見所はアルルゥカミュユズハの沐浴一枚絵…もそうなんだけど、重要ポイントはカミュの使用した幻術、になるでしょうかね、シナリオ上の伏線という意味でも。原作では「法術」という形で魔法がバンバン登場した(おっそろしく弱かったけどな!)んだけど、今回のアニメ版では「まぼろし」程度に規模が押さえられている。これまでコツコツと「異世界戦国時代劇」を造り上げてきただけに、下手をするとそれをブチ壊し兼ねないファンタジックな法術の登場は願い下げた、この程度が限界だ、という判断か。バンバン魔法の飛び交う戦争シーンも、それはそれで観てみたかった気もしますが、まあ仕方ない。今後の「異世界戦国合戦時代劇」(なんじゃそりゃ)としてのうたわれに期待しよう。



・第07話「皇都侵攻」
トゥスクル建国。
ドラマ部分はエルルゥ関連のみで、あとはとにかく戦争戦争、ひたすら戦争。軍隊はかなりCGを使っている様ですが、それでもこれだけモブが動くのは凄い。
原作でも大した役柄とは言えなかったにせよ、あまりのヌワンギの扱いの違いに涙。しかしこのシーン(とクロウ敗北シーン)のお陰で、原作とアニメにおけるエルルゥの扱いの違いが明白になったのではなかろうか。そのお陰で該当シーンの重みがかなーり軽くなっちゃってますけどね。クロウの「マジで負けちまいましたよ」とかかなり陳腐になっちゃっていたのは残念。ヌワンギはどうでもいい。